2018/12/17 20:14


こんにちは、ROBEです。気まぐれ連載《水曜のケセラセラ》、おそらく年内最後の更新です。と、あえて言うほど更新してないのですが。


ウェブメディアからSNS中心へ、媒体のプラットフォームは変われど、「いま、心動くもの」をファッションという切り口でお届けしてきたROBEですが、2018年は皆さんにどれだけの気持ちをお届けできたでしょうか?実用的なハウツー記事でもなく、エンタメ要素があるわけでもなく、日々気まぐれに呟き続け、時たまこうして長文を投稿する謎の存在ですが、少しでも心に残る言葉や想いを投げかけられていたら嬉しいです。



そんなROBEは設立から約2年半、様々な人と出会いながら活動を続けてきました。出会いというのは不思議なもので、無理くりして出会っても薄っぺらい関係のまま、それ以上でも以下でもない存在になってしまうけれど、全く意図しない偶然の出会いは(それは必然というべきなのだけど)、顔も名前も肩書きも知らなかった二人を、次第に「言わなくても好みがわかる」間柄にまでしてしまうのです。たくさんの洋服の中からピンクのキャミソールを選んだ時、「わかる、それだと思った」と言われた時の信頼感といったら。


こうして「必然」の出会いを重ねて来たROBEは、素敵な仲間や読者の皆様に支えられて今があります。そしてその夜も、またひとつ出会いが生まれたのでした。



What is the Bluestockings?



今年最後の月の始まりにしては、刺激的すぎる夜でした。12月1日、西麻布のレストランに集ったのはイラストレーター、華道家、建築学生、キュレーター、経営者、PR、調香師etc...年齢も職業も性別も住む国も、全てがバラバラな人たち。「今からいくー」とインスタントに人と会えるこの時代に少し窮屈さを覚えたレディたちが企画した、ささやかな密会です。結婚式でもないのに丁寧にインヴィテーションを用意して、ドレスコードまで決めて、そういうことを楽しんでできる可愛い人たち。



届いたインヴィテーションに記載されていたドレスコードは「青い靴下に似合うもの。」でした。きっとこれだけでは「?」かもしれませんが、彼女たちのことだから何か絶対に意味があるはず。下に小さく記載されていた「ブルーストッキング」という言葉に、そのメッセージが込められていました。


ブルーストッキングとは、18世紀ロンドンで始まった文学趣味をもつ教養ある上流婦人のグループのこと。芸術や文学についての議論が主に女性を中心になされていた、当時では稀有な場所でした。そこから名前をとって生まれたのが1911年に平塚らいてうが発行した月刊誌『青鞜』です。この創刊号は平塚を代表するあの一節から始まります。「フェミニズム」という言葉が一層身近になった現代にも、グッと響く言葉ですよね。


つまり「ブルーストッキング」だというのです、この夜は。顔を見なくても話ができる、香りを感じずともその気になれる、なんとも便利な時代だからこそ、大きなテーブルを囲んで同じ皿を分かち合おうじゃないかと。つまみにする話は決して高等なものでなくても、なんだっていいのです。おそらくここには、そのコードを感覚で理解する人が集ったのだから。



狂騒の時代に憧れて



私は仮にもファッションの人間なので、ドレスコードには誰よりも力を入れようと、インヴィテーションをもらった時から決めていました。そして自分なりに解釈してたどり着いたのが、自由と狂騒の時代、1920年代の「フラッパー」スタイルでした。



女性の権利を叫んだ青鞜派の女性たちが活躍したほんの数年後に盛んになったこのスタイルは、決して青鞜派の彼女たちの思想に沿ったものではありません。それでも私が「青い靴下に似合うもの。」というドレスコードでこのスタイルを選んだ理由は、「女性が自由に声を上げること」という姿勢を、それぞれに共通して感じたからでした。


恋にも酒にも娯楽にも性にも奔放で、第一次世界大戦後の混沌とした時代を自由に生き抜いた「新しい女」たち。私はその自由さと「女であること」を楽しんでいる様がとても爽快で、映画や文学の中でしか知らない世界ではあるけれど、とても憧れ、その中に現代のカオスに対する希望も見出しているのです。





男だ女だと線引きしてどちらかになるべく武装するのではなく、美しいものを纏い、「その夜」だけは欲のままに生きることを自分に許す。カテゴリーに縛られない、個性にも囚われない、ステレオタイプである自分も愛せると自信を持って言える。そんな環境が、今の私の理想なのです。だから、越境した人々が集った12月1日のその夜は、とても気持ちの良いものでした。



装いは空気を変える魔法をかける



店の中にいたのは私たちだけではありませんでした。ワインを数本空けてほろ酔いのころ、店内にいた一組のカップルに話しかけられます。



「今日は何があるんですか?」



それもそうです。2018年のハロウィンでもない12月の日曜に、20年代のフラッパースタイルで街に出てくる人がいるでしょうか。しかもグループの中、一人で(笑)




「今日は海外から帰国した友人が、素敵な人たちを集めてくれて。結婚式の二次会じゃないんですよ(笑)この会のドレスコードがあるんです。それは...」



ブルーストッキングのお題から青鞜派、そして20年代へと繋げた個人的解釈をすっかり熱が入ってパキパキと語る私を、キラキラした目で見つめてくれた二人は、こう言ってくれました。




「すてき。着飾る機会ってあまりないし勇気でないけど、お姉さんの話を聞いたらおしゃれをしたくなちゃった。装いの意味をちゃんと考えると、着飾ることももっと面白くなりそう。」





その言葉を聞いた時、喉の奥が熱くなりました。ROBEで発信している「ファッションが持つ意味、装いを考えること」を、こうして体現して、実際に人の気持ちを動かすことができたその瞬間に、誰でもない私自身の心が一番動かされたのです。


着飾るということは、決して派手な服を着ることではありません。「その空間で目立つ」のではなく、「その空間の空気を変える」ということなのではないでしょうか。総スパンコールのドレスを着ておいて、説得力がまるでないのですが(笑)




その夜、私は「私たちの空間」のコードに沿って着飾って来たつもりでしたが、その二人の「空間」に、装いで変化を与えてしまったのです。もちろんそれが悪く働くこともあるので、ファッションの難しい一面でもあるのですが、私はこの魔法がポジティブにかかる瞬間を、素直にとても愛しています。



夜もそこそこ更けた頃、カップルと別れを告げ、私たちは酔い覚ましのカクテルを探しに、また次の隠れ家へと歩いて行ったのでした。


photo by @ootscalejournal


クリスマス会しましょう!



ということで、「装うことの意味を考えた結果生まれたファッションは、何かしらの力を持つのです。」という話などを、ぜひ対面でしませんか?いつもは画面越しのお付き合いなので、お茶でも飲みながらお話ししましょう。空気を変えるのは得意でも、空気を読むのが苦手なROBEより、日頃の感謝を込めてあえてクリスマスイブにお茶会を開きたいと思います。


 
5月、8月に開催した #ROBE屋 に続き、今回はちょっと形を変えて皆様とお会いできる機会を作りました。清澄白河のおだやかな空気が流れるカフェの一角で、ROBEセレクトの服を展示・販売いたします。当日はROBEも一日中お店にいるので、ぜひ皆さんとあーだこーだとゆるりとお話しできたらと思います。


ご来場いただいた方にはドリンク一杯を提供いたします。先着でオリジナルのお菓子もご用意しておりますので、ぜひ2018年クリスマスの思い出前に、遊びに来てくださいね。ばったり同じタイミングで同席した人と、お話しするのも楽しいかもしれません。それこそ、必然の偶然の出会いがあるかもしれないよ。




 

ROBEクリスマスお茶会


日時:12月24日(月・祝)10時〜21時(L.O. 20:30)


参加費:なし!どなたでもお越しいただけます。


会場:WORLD NEIGHBORS CAFE 清澄白河
〒135-0023 東京都江東区平野4-13-1


半蔵門線・大江戸線 「清澄白河」駅 徒歩13分
東西線「木場」駅 徒歩14分
都営新宿線「菊川」駅 徒歩17分


【取り扱いブランド】
RPKO、EAUSEENON
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