2018/03/22 02:08


職業柄、常日頃「女性像」について考える。ショーを行うようなコレクションブランドも、それよりはターゲットの広いマス向けのブランドも、必ずブランドが掲げる女性像というものがある。「こういう女性になりたい」「こんな女性に向けて」など体裁は様々。


例えばROBEの場合は「ジャンルレスにファッションを楽しむ越境レディ」というキャッチコピーを掲げていて、文字通り、枠にはまらず様々なファッション(と、その周囲)を越境しながら楽しむ女性がミューズ。と、一応定めてはいるものの、少々厄介なのが、言語化してしまうと意図せず強いものになってしまうということ。本当はぼんやりとした輪郭だけで、もう少しファジーなもので良いと思っているのだけど。



「セクシーでありながら自立した女性」の為の服作りで、デビューから2年という短さでこの夜の主役に躍り出たのはTHE Dallas(ザ・ダラス)。ショーのスタート前、ホールに響くジャズにつられ体を揺らしそうになるのを抑えながら、ファーストランウェイに期待を膨らませる。


座席には「感謝の気持ちを込めて」というデザイナー田中文江さんからのメッセージとともに、ブランドのシグネチャーであるリーフ型レザーで作られたブローチが置かれている。この葉がブランドを前へ前へと導いた一枚なのだ。


「mood indigo」その時流れていた陽気なジャズの曲名は、「死にたくなる気分」を表したものだった。はて、ブランド2周年のお祝いショーになぜそんな曲を?


答えはショーの中にある。いつだって目の前にあることが答え(もしくはその一歩手前)というのを忘れてはならない。



「mirror」をテーマにした2018年秋冬コレクションは、2周年を迎えたブランドが今一度原点に立ち返り、自分自身を見つめ直して次のステージへ進もうという意志が込められている。


見つめ直す作業は簡単なことではない。自分の気持ちの移り変わりを逐一メモするように、どこかに留めて置かないといけないから。三部構成で行われたショーは、リラックスしたありのままの姿の女性、mood indigoな感情に支配された女性、そして最愛の人からの愛に包まれた女性が、それぞれ違う香りをまとって足早に歩いていく。


私自身、感情の波が激しい女性だからよくわかる。「女心と秋の空」なんていう言葉があるけれど、そんなにわかりやすいものじゃないと、この言葉を詠んだ人に物申したい。予報の方法すら確立されてないのだから。
 

 
遊牧民。ダラスレディたちはまさにそんな言葉がぴったりだと思った。留まることなく気の向くままに移り住む。夜を越え、一筋の光となって次の朝を導く。そして朝日に溶けるように姿を消す。残り香だけが置き土産。


フリンジを揺らして風を感じ、ハーネスで自らを締め付けてまじないを唱える。そこにあるのは誰かの視線で火照る肌ではなく、内なる熱情から生まれる赤。


 

 

「女性が女性らしくありながら、それでいて強くいてもいいんだよ。」誰かの走馬灯をのぞいているような数分間で聞こえてきたのは、そんな言葉だった。今っぽく言うと「エンパワメント」といったところだろうが、ファッションですもの、もう少し肩の力を抜いてみようじゃないか。


セクシーであることは、決して男性に媚びることではなく、凛とした雰囲気を纏うために必要な要素だとすれば、凛といることが自分の強さに繋がるのなら、それはそれでいいのだと思う。時にはしなだれて、誰かに寄りかかってもいいのだ。


 

 

それこそmood indigoな日だってある。でもそんな日があるからこそ、私の中に深みが生まれる。堅苦しいことは言わないで、つまり、背中を押してくれる服。
 

text. Azu Satoh


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