2018/02/26 11:00


こんにちは、編集長のAzuです。気まぐれ連載《水曜のケセラセラ》第34回目になりました。前回は展示会でオーダーした服が呼び戻す記憶の話をしました。今回は、洋服の賞味期限についてのお話をしてみようと思います。


※この記事は2017年10月に執筆したものです。


衝動買いはしません。


この仕事をしているとどうしても「洋服バンバン買ってそう」と思われがちなのですが、意外と衝動買いはしません。買い物をするときは事前にECやSNSで下調べをしてから何度も店に足を運び、手持ちのワードローブと組み合わせて着回しができるか考えてから購入します。おそらくこのプロセスが大変面倒なので、多くの人が「ショッピングは大好きだけど少し足が遠のく」と感じているポイントなのでしょうけれど、ここを楽しめるかどうかで、長く付き合えるものと出会えるかが決まってきます。




ということで、買い物にはかなりの体力を使うのであまり頻繁にはしません。そんな私が本当に一年ぶりくらいに衝動買いしてしまった服が写真の白いシャツワンピースです。ヴィンテージの洋服を再構築してコレクションを展開するブランドMALION vintageで購入しました。




もともとブランドのインスタグラムをフォローしていて気になっていたのですが、実店舗もECもなくポップアップベースの販売だったので、なかなか実物を見に行く機会がありませんでした。このワンピースはインスタで一目惚れしてどこで買えるやらともがいていたのですが、先日ポップアップが伊勢丹新宿店で行われることを知り、初日の朝一で駆けつけてゲット。見るだけのつもりだったのですが、試着して速攻「どっちにしようかな?」と買う前提の思考に。「これを着ていると気分が上がる!」という衝動が走ってしまいました。これぞ衝動買い!


数十年の時を経て蘇る服


背中から垂れた大きなタイが特徴のこのワンピースは、ヴィンテージ(たしか1950年代あたり)のシュミーズドレス数枚を再構築して作られています。同じものは一枚もなく、元のシュミーズドレスの良さを活かして作られているので襟元のデザインや生地の質感がそれぞれ異なっています。私が購入したスクエアネックの一枚は胸元にイニシャルの刺繍が入っていたので、誰かのために作られたナイトウェアだったかもしれません。そのストーリーを想像するだけでもワクワクしませんか?



生地が違うとシルエットの出方が同じ型でも違ってくるので、ここばかりはネットで見るだけではわかりません。実際にお店に行ってみて一枚一枚比べて自分のお気に入りを見つけていきます。数十年の時を経て一枚のワンピースに蘇った服たちを一枚ずつ見比べながら、今の私の気分にぴったりな一枚を探していく。まるでタイムスリップしたような心地にさせてくれる買い物体験でした。


洋服の賞味期限っていつ?


特にヴィンテージが好きなわけでもなく、今回はたまたまデザインが気に入ったので購入に至ったわけですが、実物を目にすると古いものの面白さがわかります。それと同時に、数十年も前の生地なのにこんなにしっかりとした状態で残っているんだ、デザイン次第で現代にアップデートできるんだ、と改めて驚きました。


実は買い物をする少し前、ちょっと衝撃的なことを耳にしてしまって、服の賞味期限について考えさせられていたのです。洋服は季節商品なので、数ヶ月のプロパー販売時期が終われば値段は下がる一方。それでも売れなかった服はどうなると思いますか?様々な活用方法がありますが、新品のまま廃棄という事実もあります。




今起こっている事実としてそれを聞いてしまった時、とても悲しくなりました。服は食料品の様に賞味期限があるものなのでしょうか?今季のトレンドが終わってしまったからって、オフショルダーは来年着られない?去年買った服を今年着るのはダサい?そんなこと絶対にありません。無駄に作って無駄に捨てていく。そうしたシステムこそよっぽどダサい。ファッションは汚い産業だ、とVETEMENTSのデザイナーがぼやいていましたが、本当にその通りです。便利に見えるサービスも、裏を見ると利益優先の非サスティナブルな仕組みだったり。



半年の命の服もあれば、50年60年と形を変えて着続けられる、このワンピースのような服もあります。そこの違いはなんでしょう?ただ耐久性やデザインの問題なのか。それとも、手にした人の衝動の問題なのか。


安くて可愛くて、今だけよければそれでいいのでしょうか。使えるものを捨てていくことに、違和感を感じてください。なんとなくで選ぶことに、危機感を感じてください。私は、「衝動」こそサスティナブルな感情なのだと思っています。その時に感じた強い衝撃は、最大瞬間風速でその一瞬を駆け抜けて、その後いつまでたっても思い出すから。あなたが持っている服に賞味期限はありますか?




この記事はパリコレ取材の帰り道に書き記しています。パリでは街中に古着屋が並び、ファストファッションの店があればラグジュアリーブランドがひしめく通りもある。若い子たちはうまくそれらをミックスして、自分だけのおしゃれを楽しんでいます。私がパリに魅了される理由は、しっかりと意志をもった選択をできる人が多いから。私もつい怠けて誰かの意見に乗ってしまうことがあるけれど、衝動を掴む感度をにぶらせないためにも、パリジェンヌのように意志を強く、選択して生きていかなければと思います。


text. Azu Satoh


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