2018/01/24 11:54


どうしても手放せない、必ず身につけている、私と言えばコレ…そんな偏愛しているアイテムはありませんか?【 偏愛至上主義 】では、誰かが愛してやまないアイテムに秘められたストーリーを少しだけ覗き見していきます。ワードローブの中にはいくつものストーリーが眠っているはず。


第2回に登場するのはROBEでデザイン・プロップ担当、デザインコラムニスト(out of the scale 主宰/Numéroブロガー)のaisa。ファッションはもちろん建築やテキスタイル、デザインを愛する彼女が偏愛する「HERMÈS」Lace-up Shoesのストーリー。



出会いはパリ。運命の一足


2011年の夏。初めて行くことになった海外、パリの蚤の市でこの靴と出会いました。


「アンティークマーケット」というよりはガラクタみたいなものが多く、まさに「蚤の市」の雰囲気。ちょうど「マニッシュ」が気分のシーズンで、たまたま手に取った1つの靴。3色のレザーを使っている珍しいデザインに魅せられながらひっくり返して見てみると、なんとあのHERMÈSの刻印が押されているではないですか!


95€と学生でも手に届く値段。(しかも当時は今考えると最も円高だったのでは?という為替レート)相場も分からず本物かどうか見極める目もなかったのですが、足を入れた次の瞬間には「シルヴプレ」と店番のお兄さんに声をかけていました。


小さい・幅が狭い・薄いというちんちくりんな私の足。靴探しは本当に苦労するからこそ、ピッタリ合う靴に出会えた瞬間は思わず運命を感じてしまう。その靴と、その場所と、そのブランドに。


HERMÈSとの運命的な出会いはこの靴から。旅の翌年参加させて頂いたイベントでは「カレ」とHERMÈSが作り出す世界観の虜になり、HERMÈSを身に纏うに相応しい女性になることが私のひとつの目標になっています。


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素敵な靴が導いてくれるもの


パリで出会って買ったものの、普段は箱に大切にしまってお出かけする時だけ履いていたHERMÈSの靴。最も印象的な思い出は2012年、伊勢丹新宿店で行われたAcneのPop up shopでのこと。


それはまだAcneが日本に旗艦店をオープンする前でした。当時からAcneが気になっていた私が熱心に商品を眺めていると、スタッフの外国人のお兄さんが“Cool shoes!”と声をかけてくれて、とても丁寧に接客して下さったのです。


HERMÈSの靴の話から始まり、Acneの服のコンセプトや素材、Acne Paperの話まで...とにかくファッションの知的欲求を満たされまくりの感動の時間!後から聞いた噂によると彼はAcneで売り上げNo.1の店員さん(確かドイツの方)だったようで、とてもラッキーな出会いです。


「素敵な靴は、素敵な出会いへと導いてくれて、自信を与えてくれるものだ」と、この靴が初めて教えてくれました。キャリー・ブラッドショーも「素敵な靴は素敵なところに連れて行ってくれる」と言っていたように。


横浜の「お直し」屋さん


でも、この靴には問題が一つ...それは、ダメージ。


ヴィンテージにダメージの問題はつきものですが、ダメージを受けやすいヒールのゴムの部分だけではなくソール全体にも痛みがあり、中敷も取れてレザーのツヤもない。どこへ修理に出したらいいのかも分からなかったので履く度にダメージが気になるように。


ダメージが酷くならないようにと箱に保管されること2年(!)文字通り箱入り娘になっていたのですが、去年の冬に靴の「お直し」職人さんの手によって生き返ったのです!


お願いしたのは横浜に本店を構えるハドソン靴店。MUJI 有楽町店で行われていた「お直し市場」に出店されていた時にご相談させて頂いたのが始まりです。


相談しながら、メンズとレディースの靴の製法の違いや、様々なブランドのシューズの特徴まで色々教えて頂きました。靴好きを公言しているのが恥ずかしくなるほど、靴について知らないことばかりで目から鱗。ちなみにHERMÈSのレザーは他のブランドの比にならないクオリティの高さだそう。と言うのも、世界中の等級の高いレザーは全てHERMÈSが持っていると言っても過言ではないほど、産地をおさえているんだとか。


「お直し」方法の提案も、さすがはプロ。普通のリペアだとソールは黒いゴムの一択で残念な気分になってしまうことが多いのですが、ハドソン靴店では靴の構造や製法を細かく見ながら「安いけど数シーズンしか保たない方法」「少し費用はかかるけど10年保つ方法」の2通りをご提案頂きました。


私はソールを「貼る」のではなく「縫う」手法でお直しをオーダー。一般的に「縫い」はメンズのシューズでしか用いられない方法で、馴染むまでは少し固いかもしれないということでしたが、10年保つこちらの方法でお願いしました。


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宝物こそ使って愛して


一ヶ月ほどして帰って来た靴は、まるで新品のよう!レザーは輝きを取り戻し、ソールも元と同じ風合いのもので、縫いのステッチもとても美しい。中央のHERMÈSの刻印の部分は残してくれた心遣いにも感動です。


相談に乗ってもらった時に印象的だったのが「靴は履かないとどんどん駄目になる」という言葉。大事にしすぎて履かずにいると、履きたい時に履けなくなってしまう。「大切なものこそ、使うこと。使いながら、使えなくなる前にケアしてあげること。」


この靴は「お直し」というモノとの新しい関わり方までも教えてくれました。


素敵な靴に足を通した瞬間、私のフットワークはとても軽快に。「お直し」があると思えばダメージへの恐怖心も消えて、もっと自由にファッションを楽しめる気がします。


さあ素敵な靴を履いて、今日はどんな冒険をしよう。



Text. aisa( Instagram / Numéro official Blogout of the scale )


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